ポイント
2026年10月27日に、よみうり大手町ホールにて開催されたミュージカル『秘密の花園』に車いすで参戦した際のレポである。
少人数による濃密な舞台
本公演の大きな特徴は、出演キャストが4名のみでありながら、ほぼ出ずっぱりで物語を紡いでいく点だ。回想シーンの幼少期を含めると実質的に1人3役をこなし、キャスト自らが小道具の移動も行っている。
演者が考えなければならないことが多いと想像される中、乱れることなく繊細なお芝居と美しい歌声を響かせるキャストの皆様には、ただただ脱帽するほかない。
作中で特に印象に残ったのは、「願いは希望を持つこと」というセリフである。孤児院で過ごす4名が、養子縁組を成立させるために大人に媚び続けたものの長らくうまくいかず、希望を持てないでいる中、やっとその手が届きそうな場面で放たれた言葉だ。
身寄りがなく未来に希望の持ちにくい4名にとって、孤児院でこっそりと「秘密の花園」の芝居をすることが、何よりの拠り所だった。観客と演者という立場ではあるが、その「秘密」を4名と共有したことで、自分も彼らの仲間に入れてもらったような、心のお守りをいただいたような温かい感覚に包まれた。
キャストの魅力
奥田いろはさん
筆者が奥田さんのお芝居を拝見するのは『レイディ・ベス』以来となる。『レイディ・ベス』ではのちに英国女王になるベスを気高く演じられていたが、本公演ではうって変わって天真爛漫な10代の子どもの役であり、無邪気な言動が多く見られた。それは快活な奥田さんご本人とも重なる部分があり、特に可愛らしく感じられた。
島太星さん
バラエティ番組で見せる奇想天外な一面は見る影もなく、そこにあったのは圧巻のお芝居と歌声だった。
島さんが演じたチャーリーは、周囲への絶望から希望が見いだせなくなっており、他の3名が繰り広げる芝居を「現実逃避に過ぎない」と冷めた目で見つめる役どころだ。しかし終盤で、3名が「秘密の花園」の芝居をするようになったきっかけこそが、幼少期のチャーリー自身であったことが明かされる。
それまでの、3名の芝居を煙たがりながらも完全に無視するわけではなく、たまに視線を送りながら「意識しないように意識している」ような絶妙な振る舞いは、その結末を見事に暗示させていた。うって変わって、幼少期のチャーリーや、「秘密の花園」の芝居の中でコリンを演じているときの姿は、それまでのチャーリーとはまったくの別人に見えた。それほどまでに、島さんのお芝居は圧倒的だった。
車いすでのアクセスと劇場のサポート
劇場のエントランスは3階に位置し、客席入り口は4階および5階にある。ただし、エレベーターは通常3階にしか停止しない仕様となっているため、まずは3階で劇場スタッフと合流し、付き添いのもと専用エレベーターで4階へと移動する流れとなった。
なお、U35チケットの引き換えは4階の専用ブースで行うことができた。
前方の扉へ向かうには、4階からスロープを登る必要がある。このスロープは勾配が割と急であるうえに床がカーペット敷きとなっているため、手動車いすの自走だと少し重く感じられた。
車いすスペースは上手側の座席表でいうと6列目相当に位置している。広さに余裕があり、3〜4台ほどは入りそうなゆったりとしたスペースだった。
スペースに到着後、終演後に劇場スタッフによるケアが必要かどうかのヒアリングがあり、その細やかな配慮が行き届いた対応はありがたく感じた。参考までに、車いすスペースからステージを撮影した画像を添付しておく(URLはいずれも2026年10月28日取得)。
