2026年11月3日に東京建物 ぴあ シアターにて、舞台「春よ来い、マジで来い」を車いすで鑑賞した際のレポである。
30代目前の人間らしさと、20代前半の対比
物語で描かれるのは、何事も意思決定できない主人公・タカシの姿だ。30歳を目前に控え、焦燥感や諦めに惑わされるタカシは、何かを始めることも、あきらめることもできない。その身動きの取れないある種の痛みがひしひしと伝わってきて、タカシを演じた水川かたまりさんのお芝居がお見事だった。勇気が出ず自分で決められない一方で、人生に春が来ることを願うという、いわば他力本願なタカシが持つ矛盾には、どうしようもない人間らしさを感じて惹きつけられる。
そんな意思決定のできないタカシと対照的なのが、思ったらすぐ行動に移す女子大生2人、川床明日香さん演じる佐知と、岩本蓮加さん演じる美樹の存在だ。20代前半ならではのフレッシュさや思い切りの良さと、30歳目前の価値観の違いがまざまざと表現されていた。特に美樹は意思決定から行動までの時間がほぼゼロタイムと言っても過言ではなく、タカシのじれったさにヤキモキさせられる分、即断即決の美樹にある種の清々しさを覚えた。岩本蓮加さんは普段からサバサバした印象があるだけに、この美樹という役がまさにハマり役だと感じた。
痛みを緩和する「太陽」と「音楽」
劇中では挫折、失恋、嫉妬など、生々しい痛みや汚さのようなものがたくさん描かれる。だからこそ、宮下雄也さん演じる崎田や、劇中の音楽と歌唱を担当するHONEBONEの存在が、非常に良い鑑賞材であり潤滑油になっていた。
崎田は40代でありながら、とにかく行動を起こす人だ。あまり大きな実績はなく自信過剰なところもあるが、一貫してタカシの才能を信じている。お人好しでいい奴である崎田は劇中でまるで太陽のように感じられ、カッコよさすら覚えるほどだった。また、要所要所で登場するHONEBONEの歌と音楽が、作品が持つ痛みや汚さの角を取り、観客が物語を受け取りやすいためのクッションの役割を果たしてくれている。もしこれがなかったら、作品の面白さよりも辛さが勝っていたかもしれないと感じるほど、絶妙なバランスをもたらしていた。
車いすでのアクセス
本公演は座席表でいうと上手側R3扉すぐの1階J列32番相当の車いすスペースで観賞となった。車いすで床の通気口を踏まないように指示があったため、当日は車いすの停止場所を微調整した。、当日はもとなお、もともと購入していた券面の座席は1階D列28番だった。
ロビーからR3扉までは上り坂となっているものの、距離にして5m程度であるため、移動において大きな問題とはならないだろう。また、多目的トイレはロビー内の男性トイレと女性トイレに隣接する形で計2箇所設置されており、利用しやすい環境が整っていた。