2025年12月23日に東京ガーデンシアターで開催された「ずっと真夜中でいいのに。」(以下、ずとまよ)のライブに手動車いすで参戦したレポである。
「少なさ」と「非効率」
ボーカルのACAねさんから発せられる言葉はいつも難解だ。そのため、全体の数%も読解できていないと思うが、筆者が考える本公演のキーワードは「少なさ」と「非効率」の2点だ。
「少なさ」については、ACAねさんから、曲作りは暗闇の中からわずかなきらめきを見つけ出すようなものだという旨のお話があったことに由来する。小さな欠片をかき集めて、やっと曲ができるというイメージだろうか。そして第二の少ないものはバンドメンバーである。このツアーは基本的にアコースティック編成なので、普段のずとまよの公演に比べると楽器が少なかった。ところが、両者が「少ない」ことは物足りないことを意味しない。少なくても確かに存在し、パワフルな音を成して響いてきた。特に「またね幻」はACAねさんの魂がこもっていた。ACAねさんは音楽で(ファンを)支えたいとおっしゃったが、筆者は現に支えられている。わずかなきらめきから生まれた楽曲や、ライブでの演奏が生命活動を支えてくれているのだ。
さて、「非効率」に関して、ACAねさんが非効率を大切にされていることは2025年5月の代々木公演のレポでも書いたとおりだ。本公演で見られた非効率の1点目は泥団子である。泥団子は今回のツアーのタイトルでもある。その場で決めた楽曲を即興で披露するというコーナーで、曲名が書かれた紙が入った泥団子を割って楽曲を決めるというシーンがあった。そこでACAねさんは、土の非効率さについて語られた。自然に土が形成されるには100年かかる。その土から泥団子を作って磨く。そうして時間をかけて仕上げた泥団子を割るという行為がいかに非効率かという話をされていた。非効率の2点目は「カニ」である。ACAねさんが会場を煽り、カニの動きをするよう促すシーンが複数回あった。また、ACAねさんはカニになぞらえて、前に進めなければ横に進めばよいとお話しされていた。筆者は横に歩くという部分に非効率性を感じた。効率を求めるのであれば、徹底的に速く前に進む必要がある。他方で、横歩きはエネルギーを消費し運動はしているが、体の向きを変えない限り前には進まない。「前に進まなくても良いじゃないか」という言説は昨今よく聞かれるが、横に歩けばよいと表現されるところに、非効率にスポットライトを当てるACAさんらしさを感じた。
車いすでのアクセス
筆者は、りんかい線の国際展示場駅から会場の東京ガーデンシアターに移動した。駅からの道のりは上り坂だが、傾斜は緩やかなので、あまり困ることは無いだろう。
筆者が案内された車いすスペースは3階バルコニー1の1Bブロックの12列だ。朝礼台のような台座があり、可動式の電動昇降機で車いすに乗ったまま持ち上げてもらう。1度台座に上がってしまうと基本的には終演まで降りられないとのことだったので、それを踏まえたうえで事前にお手洗いなどを済ませる必要がある。なお、ずとまよの公演で何度か東京ガーデンシアターに来場しているが、大抵こちらのスペースに案内される。客席の詳細は東京ガーデンシアターのホームページを参照されたい(リンクは2025年12月30日取得)。
参考までに、車いすスペースからのステージを見た画像を添付しておく。
