2026年3月8日にシアター1010で観劇した舞台1リットルの涙のレポである。
「不条理」と「対比」
観劇後に感じたのは、「不条理」と「対比」である。
前者については大きく2点ある。1点目は、人当たりがよく、笑顔にあふれたヒロイン亜也が難病に罹患するという点だ。劇中でも、性格がよくてひたむきに努力する亜也が病気に苦しめられなければいけないという事実に、本人も周囲の者も苦悶するという描写があった。
2点目は結末が分かっていても心を打たれるという点だ。何らかの媒体で1リットルの涙という作品に触れていれば言わずもがなだが、まったくストーリーを知らなくても結末は予想できる。それにもかかわらず、心を動かされたのだ。筆者含め、終演後に涙を流している方を何人も見かけた。ひとえに、主演の伊藤理々杏さんを筆頭にした演者のみなさまのお芝居と演出の卓越さによるものだろう。
そして後者の対比だ。亜也は序盤から前向きな発言が多いからこそ、病気が進行していくにつれて少しずつ口に出される不安や後ろ向きな言葉が印象に残る。そして亜也と彼女を囲む者たちの笑顔と苦悶の表情という対比が終始見られた。亜也のポジティブな性格ゆえに笑顔が多い分、病気と向き合う場面では苦悩がよく見えた。また、亜也の周囲にいる者、とりわけ家族は亜也の病気を知りショックを受け、泣き出すものもいるが、少なくとも病気を打ち明ける前までは、亜也の前では笑顔で彼女を元気づけようとする。極め付きは最後のシーンだ。亜也のお通夜とみられる場面だ、各々が亜也へのお別れの言葉を述べたあと、神妙な面持ちでいる中、亜也だけが笑顔で踊っていた。病気という枷がとれた亜也の晴れやかな表情と、亜也との時間が終わってしまった者の悲哀がうかがえる表情がコントラストになっていた。
車いすユーザーとして共感した場面
亜也と違い、直ちに生死にかかわるものではないが、身体障害を持つ者として共感できる場面がいくつもあった。特に印象的だったのは2点だ。
1点目は残されたものを使うということだ。劇中では、亜也は病気の進行とともに運動機能が落ちていくが、今残っているものを使って前向きに過ごすというのが劇中での取り上げられ方だった。筆者も今でこそ手動車いすであちこち出かけて観劇やライブ鑑賞などを楽しんでいるが、身体障害が治るものではない以上、徐々に運動機能が低下していくと思われる。だからこそ、体が動くうちに観劇やライブ鑑賞などを堪能するという決意を強くした。
2点目は、亜也の身の周りのサポートをする者に負担がかかっているという点だ。亜也の担任の先生が特別支援学校への転入を家族に勧めるにあたりに述べた。常日頃、誰かの助けを借りながら生きる者として、受け止めなければならない確かな現実だ。
車いすでのアクセス
本公演の会場であるシアター1010は北千住駅直結の商業施設「ミルディスⅠ番館」内にある。今回はチケット発券後、所定のメールアドレス宛に連絡し、車いすスペースを確保してもらった。券面の座席は1階9列19番だったが、劇場の規定で下手側の1階20列5番横のスペースで観劇した。車いすスペースは広くない。通常の手動車いすで2台が限度だろう。
劇場入口はミルディスⅠ番館の11階にある。ミルディスは北千住駅と直結しているためアクセスはよいが、エレベータがなかなか来なかったので、時間に余裕を持って移動するのがよいだろう。